実践+発信

「科学技術コミュニケーション活かすプロジェクトマネジメント」 1026 白井久美子先生の講義レポート

2013.11.12

今回は日本ユニシス株式会社、人事総務部副部長 兼 人材開発室長である白井久美子先生にお越し頂きました。

白井先生は今までに、大小様々なプロジェクトマネジメントを行われています。今回は科学技術コミュニケーションに活かすプロジェクトマネジメントというテーマでお話しいただきました。

プロジェクトマネジメントとは

まず初めに、プロジェクトマネジメントのエッセンスについてお話しされました。プロジェクトとは、ある使命を受けて、ある期間内に様々な制約条件のもと、目的を達成しようとする価値創造活動です。この目的を合理的に達成しようとするために、プロジェクトマネジメントを行います。

白井先生は、そのために必要なスキルとして3つ挙げられました。それが、PM (プロジェクトマネジメント) スキル、コンセプチュアルスキル、ヒューマンスキルです。これらのスキルの中から、今回は科学技術コミュニケーターとして必要であると考えられるものについて説明していただき、その後、それに関する演習を行うという構成で、講義が進行していきました。

状況認識のためのツール

PMスキルの一つ、戦略マネジメントでは、状況を認識し、何をすべきか、そしてその優先順位を明らかにすることが重要になります。この状況認識のために使われるツールとして「特定要因図」があります。要因と結果を一目で分かるようにしたこのツールを、演習で試してみました。

フィッシュボーンダイアグラム(魚骨図)とも呼ばれるこの図では、まず背骨のように長い右矢印を描き、その先に問題となっている事柄を書きます。そしてその原因として考えられる事を、いくつも背骨の周辺に書き、小骨のように矢印を背骨へ伸ばしてつなげます。その後、それらの原因を分類していきます。これによって、優先的に解決すべき問題が何であるかを、プロジェクトのメンバーが共有できるのです。

その提案で1000円もらえる?

関係性マネジメントもPMスキルの一つです。提案・交渉力を身に着ける関係性マネジメントの演習では、ペアを作り1000円札を1枚机の上に出すように先生から指示されました。少しざわざわする教室。お題は、相手の心や価値観にひびく提案をして、1000円を受け取ることでした。

相手のことをよくわかっていない状態で、価値観を理解することは困難です。そのため、まずは相手について知ることが重要です。相手の好みや困っていることから話を広げて、自分の持っている情報と照らし合わせることが必要だということが、この演習から理解できました。

ちなみに私の場合は、自分の提供した情報を相手が既に持っており、残念ながら交渉は不成立でした・・・

科学技術コミュニケーションにおけるマネジメントの必要性

様々な演習を通して、実際に体験しながらプロジェクトマネジメントを身に着けていきました。このようなマネジメントを行う理由として、腹落ちしていない状態で物事を決定すると、あとで問題が起こる可能性がある、という話が印象的でした。

プロジェクトに関わる人が多くなればなるほど、方向性を統一することが難しくなるのは学生の私でも、容易に想像できます。専門家と市民の橋渡しをすることが、科学技術コミュニケーターとしての役割ですが、このようなマネジメントスキルを身に着けることは、問題点や優先順位を明確にして双方の交渉や対話を促進するため、合意形成をなすことにも役に立ちそうです。

(須賀俊文 2013年度本科・北海道大学理学部 3年)