実践+発信

「リーダーシップのあり方と学び方について考える」8/2 日向野幹也先生の講義レポート

2014.8.20

今回の講義では、全国から注目を集めている先進的な「リーダーシップ教育プログラム」について、日向野幹也・立教大学経営学部教授(同大リーダーシップ研究所所長)にお話しいただきました。またこの1時間半の講義に先立って、「リーダーシップ開発基礎演習」(3時間)も行われました。

慣れ親しんだ経済学分野をあえて離れて、国内にも海外にも手本がないという状態で始めたというプログラムでしたが、2006年の経営学部開設とともに躍進をはじめます。今では、サークルを辞めて学部生活に入れ込む学生も続出するほどになりました。SA(Student Assistant)を募集すると、定員の3倍をこえる申し込みが殺到するそうです。

■国際標準のリーダーシップとは

リーダーシップといえば、役職や権限、個人のカリスマに紐付いたもの、というのが日本での一般的な認識です。しかし、世界標準は違うと日向野さんは言います。リーダーシップとは権限や役職に関係なく、誰もが日常的に発揮するものであり、成果を達成するために、命令を受けなくても各個人がそれぞれの場面で必要なことを行うのがリーダーシップなのです。

クーゼスとポズナーが唱えるリーダーの「5つの行動」を少しシンプルにした、リーダーの行動を日向野さんが示してくださいました。この3つのどれが欠けてもリーダーシップとは言えないそうです。

1)Setting the goal …目標設定

2)Setting the example …率先垂範

3)Enabling others …他者支援

例えば、電車が遅れて最終バスが無くなってしまった、駅前のタクシー乗り場を想像してみます。この状況を上記にあてはめると以下のようになります。

1)目標設定「そこにいるみんなが早く帰宅する」

2)率先垂範「自ら率先して相乗りを募る、話しかける」

3)他者支援「自分とその周囲だけでなく、その場にいる他の人々も真似をして相乗りを募り出す」

普段は「タクシー会社に申し訳ない」「生意気な奴と思われたくない」といった常識が働き、1)の目標設定の段階でストップしてしまいます。しかし、例えば東日本大震災の時などは各地で様々な人がリーダーシップを発揮しました。日本においても、緊急時にはリーダーシップが機能するのです。

また日向野さんは「不満とクレーム」に関連して、分かりやすい表現でリーダーシップを説明してくれました。例えば、何か不満があったときに、それを苦情として伝えるだけなのは普通の消費者です。不満を提案に変えてしかるべきところに持っていく、あるいは自分たちで改善を実行してしまうのがリーダーシップなのだそうです。

講義に先立って行われた演習では、このリーダーシップを学べるゲームを実施しました。メンバー間でゲーム中のリーダーシップ行動について相互フィードバックを行い、短い演習でしたが、非常に学びが深まりました。

■リーダーシップ教育が社会を変える

リーダーシップがなぜ必要とされているのでしょうか。組織の構成員がそれぞれリーダーシップをもつことで、状況や環境の変化に素早く適応し、イノベーションを生み出しやすくなります。市場自体を生み出すような画期的な製品は、トップダウンからは生まれにくく、傍流やあるいは現場から生まれてくることがあります。国際標準のリーダーシップは、企業や官庁、大学など、成果を求められるあらゆる職場で今、望まれています。

全国の大学にこうしたリーダーシップ教育プログラムが波及して、「権限がなくてもリーダーシップを発揮できる人材」が社会に続々と送り出されるようにしていきたいと、日向野さんは言います。特にこうした態度能力を高めるための教育は早ければ早いほどよく、できれば大学の初年次や高校生くらいには行う必要があるそうです。

今回の講義を聞いて、立教大学経営学部の取り組みがどんどん普及することで、日本の社会が大きく変わると感じました。日向野先生、またアシスタントを務めてくださった野間千愛(のま ちあき)さん(経営学部3年生)、どうもありがとうございました。

立教大学経営学部 BLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)

http://cob.rikkyo.ac.jp/blp/about.html