実践+発信

「経験学習の考え自らの学びをバージョンアップし、学習環境をデザインするために~」7/25松尾睦先生の講義レポート

2015.8.8

レポート:三木 彰真(2015年度本科映像メディア実習/北海道大学農学事務部職員)

「今回の仕事の結果は、上司(先生)や同僚から良い反応を得られなかった…。」仕事上でそのような感想をもつことはよくあることです。そして「準備時間が足りな かった」「客観性が乏しかった」など、自分なりの理由を見つけようとするかもしれません。しかし、いくら難しい仕事にチャレンジしても、やりっ放しと少しの反省では成長が望めません。反省した内容から教訓を得ようと努力することが大切です。松尾先生は、「経験から学ぶ力」を最大化するためのサイクルの特徴はどのようなものか、ビジネスの世界で活躍しているリーダーのインタビュー等を交えながら解説してくださいました。

継続的成長=「ストレッチ」+「リフレクション」+「エンジョイメント」

適切な「思い」と「つながり」を大切にしながら、挑戦し、振り返り、楽しもうとすると経験から多くの学びを得ることが可能になるといいます。「挑戦し、振り返り、楽しむ」3つの要素は「ストレッチ、リフレクション、エンジョイメント」という言葉でも表現できます。

(1)ストレッチ=高い目標に向かって挑戦する力

(2)リフレクション=何が良くて何が悪かったのか、経験を内省しようとする力

(3)エンジョイメント=仕事のやりがいを見つけて楽しもうとする力

そして3つの要素を高める原動力が「思い」と「つながり」です。職場というコミュニティの中で、他者との関係性を大切にしながら、仕事に価値を見いだしていこうとする思いが大切なのです。

自身の経験からうまく学習している人は仕事を通じて、3つのサイクルを意識し、次回に応用しようと努力しているそうです。このサイクルを意識的に循環させるのは難しいことかもしれませんが、まずは「良い経験」をしたときに、なぜ成功したのかその経験から教訓を引きだすことから初めてもよいかもしれません。

良い経験=連携×変革×育成

「良い経験」(大きく成長した体験)とは何でしょうか。企業の課長・部長を対象とした調査によると、

(1)部門を越えた連携の経験:価値観の違う人を動かすことで視野が広がる

(2)変革に参加した経験:変革には抵抗がつきものであるため、新しい分野の勉強などが増える

(3)部下を育成した経験:リーダーシップが必要とされる

の3つの経験を複合的に体験している人に優れたマネージャーが多いとのことです。私も、これまでの仕事を振り返ってみたとき、3つ全てが含まれる経験をしたことはほとんどありません。しかし、経験が無いと嘆くより、経験を自ら勝ち取っていかなければならない、挑戦の機会を増やしていかなければならないとあらためて考えさせられました。

教え上手=継続的成長を促す力

職場で行われる教育をOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)といいます。OJTは会社の成長を促す効果があると言われています。では新人を育てるのがうまい上司はどのような特徴を持っているのでしょうか。松尾先生が様々な企業の管理職にインタビューを行ってわかったことは、育て上手なリーダーは新人の「経験から学ぶ力」を引き出そうと努力しているということです。すなわち、

(1)高い目標を設定する(ストレッチ)

(2)相談や進捗を確認しつつ内省、リフレクションを促す(リフレクション)

(3)ポジティブな面をフィードバックして自信をつけ、仕事に前向きに取り組めるようにする(エンジョイメント)

という3つの支援を若手に示し、個人の経験から学ぶ力を促しているのです。授業の中で経験学習のチェックリストを使って、私たちの現状を診断し、周囲と意見交換する時間も用意されました。私自身、普段深く意識していなかった「経験の生かし方」について新しい発見がある授業でした。松尾先生、ありがとうございました。