実践+発信

健康リテラシーを高めて健康寿命を伸ばそう!(NHKエデュケーショナル協力)を開催

2017.8.23

2017年8月10日、北海道大学学術交流会館にて、NHKエデュケーショナル・シニアプロデューサーの安川美杉さんによる夏期特別講座「健康リテラシーを高めて健康寿命を伸ばそう!」(CoSTEP・NHKエデュケーショナル共催)が開かれました。当日は健康に関心のある50名ほどの学生や市民が集まり、安川さんの話に熱心に耳を傾けていました。

NHKエデュケーショナル・シニアプロデューサー 安川美杉さん

今回の講座では、健康寿命とは何か、実際に健康寿命を伸ばすためにはどうしたらいいのかに関して、「食生活」と「運動」「睡眠」という3つの柱に沿って、安川さんからお話いただきました。

■健康リテラシーを高めるには?

健康リテラシーとは「健康や医療に対する正しい知識を見極め理解し活用し、それを元にコミュニケーションできる能力」のことです。

近年、IT企業DeNAが運営していた医療系まとめサイト「WELQ(ウェルク)」の記事が、不正確かつ著作権侵害の恐れがあるとされた問題が記憶に新しいですが、こうした記事を鵜呑みにすることなく、誰がいつ発表したどんな研究なのか、科学的根拠を見極める姿勢が大切です。こうしたお話は科学技術コミュニケーション全般と深い関係がありました。

例えば、食生活に関しては、以下のように減塩対策のポイントをあげました。「調味料は毎回量る」「酸味・香辛料・香味野菜・だしを活用」「具だくさんで汁の量を減らす」「濃い味を一品に集中させる」。また魚や野菜をたくさん食べることの重要性、野菜や果物とがん予防の関係性についてもお話がありました。

脂肪の模型をお借りして会場で回しました。ずっしりと重いですが、これで1kg

また運動不足解消のために、椅子を使ったレジスタンス運動(筋肉に抵抗(レジスタンス)をかける動作を繰り返し行う運動)を会場の皆さんと一緒に行いました。最近は筋トレの重要性が注目されているそうです。踏み台や椅子を使ったストレッチはテレビを見ながらでもできるので、誰でも簡単に始められそうでした。

来場者も一緒にレジスタンス運動を体験しました

そして睡眠について。何と5人に1人が睡眠で休養が十分にとれていないといいます。睡眠不足は生活習慣病やうつ病などにつながりやすく、持病が多い人は特に要注意です。「床についていた時間」「眠った時間」「日中の気分」などを記録する睡眠日誌が有効だそうです。

■日本健康マスター検定

「健康を語れる人になる」というコンセプトで、一般社団法人・日本健康生活推進協会によって日本健康マスター検定が全国27都市で開催されています。この取組みをNHKエデュケーショナルも後援していて、健康情報を伝える立場にあるテレビのディレクターやプロデューサー、出演者なども積極的に受験しているそうです。

関心がある方はぜひ、以下のサイトより検定の情報をご覧になって下さい。

http://www.nhk-ed.co.jp/event/

■キャリアセミナー「科学番組制作の仕事」

今回、特別にCoSTEPの学生向けに、キャリアセミナーを開催しました。5人の学生から寄せられた質問に対して安川さんが一つ一つ言葉を選びながら丁寧に答えてくださいました。

安川さんが学生たちの質問に答えてくださいました

安川さんがディレクターとして制作し科学放送高柳記念賞を受賞した「NHKスペシャル 赤ちゃん~成長の不思議な道のり~」について、理学部3年の越後谷駿さんから「どのような構想のもと企画されたのでしょうか?」という質問がありました。

成長とは普通、だんだんできないことができるようになっていくというイメージがありますが、赤ちゃんの場合は、もしかしたら最初は何でもできる能力を持っている可能性があるが、それが生活や環境にあわせて能力を削ぎ落としているのではないか?そこに人間らしさが生まれる重要なプロセスがあるのではないか、というコンセプトに基づいて、安川さんは綿密な取材を重ねて、企画を何度も練り直したそうです。

取材しても番組にならない企画や、番組に入れ込めなかった話題もたくさんありますが、そうした蓄積が形を変えて、時間をかけて花開くこともあるとのことです。そうした膨大な情報の積み重ねがNHKの科学番組を形作っていることが伝わってきました。

専門性を伝えようとするとテレビには限界がありますが、テレビは学んでみようかなと思うきっかけになる、知的好奇心を刺激する入り口になるというところが、重要な役割ではないかと安川さんは話して下さいました。

安川さん、今回は貴重なお話を聞かせてもらって本当にありがとうございました。