文責:前田裕斗
メディアデザイン実習班:櫻井弘道・岡碧幸・前田裕斗
長谷川俊・植村茉莉恵・何玉莹・上川伶
2017年10月15日(日)、CoSTEP13期本科・メディアデザイン実習は、札幌市青少年科学館にて、小学2年生から中学3年生までを対象にバーチャルリアリティ(VR)の技術を用いたサイエンスワークショップを開催しました。
その名も『没入!バーチャル支笏湖ワールド』。札幌から程近い湖である支笏湖を題材に、地形の成り立ちや、水中に暮らす生き物や外来生物が引き起こしている問題について興味を持ってもらうことを目的としたイベントです。VR映像を表示するスマートフォンをゴーグルにセットして、頭に装着すると、視線を向けた方向すべての映像を360度動画として見ることができ、疑似ツアー体験ができる技術を活用しました。
※VRゴーグルの使用にあたっては、スマートフォンを組み合わせるだけでVRを体験できる簡易VRスコープ「ハコスコ」の推奨年齢(7歳以上)にならっています。
(VR映像を真剣な表情で覗き込む子ども。)
支笏湖での水中撮影
ワークショップのメインはなんといっても、VR映像を用いたダイビングの疑似体験!子どもたちにVRによる没入体験してもらうべく、メディアデザインメンバーは8月28日に、水中30mでも360度映像を撮ることができるカメラ“Nikon Keymission”を使って、支笏湖で撮影を行ってきました。
メンバーのほとんどがスキューバダイビング初体験という状況での水中撮影。日本国内の湖の水質ランキングで9年連続日本一に輝く支笏湖の綺麗な水中映像をばっちりカメラに収めることに成功しました。
(ダイビングの手ほどきを受けながら、水中撮影を行っていきます。)
(これから、潜ってきます!)
(支笏湖の水の中には豊かな自然環境が広がっています。)
(魚が逃げないように、そっと近づいて撮影を行います。)
(お世話になったインストラクターの関 勝幸さんらと一緒に記念撮影。)
イベント当日の様子
当日のイベントは、30分×4回の完全入れ替え制で、13時からスタート。12時から全ての回の整理券配布を開始しました。一部の時間帯は科学館のプラネタリウム上映と時間が重なっていたにも関わらず、43名のお子さんに参加していただくことができました。
(午前中のブリーフィングの様子。)
(会場設営中の長谷川俊さんと植村茉莉恵さん。さて、このブルーシートはなんになるでしょう?)
(直前のリハーサル中。子どもの気持ちになって、何度もシミュレーションします。)
(リハーサルの様子を見守る、ディレクター役の櫻井弘道さん。)
(メンバーに説明を行う、岡碧幸さん。)
(本番さながらに、VRゴーグルの装着チェックも行います。)
(整理券を配布し始めました。親子連れが次から次へと整理券を受け取っていきます。)
(受付中の一コマ。)
支笏湖探検隊長によるプレゼンテーション
子どもたちが集まり、席に着くとイベントの始まりです。まずは、「支笏湖探検隊長」に扮したナビゲーターが支笏湖の自然を紹介します。支笏湖が火山活動によってできたカルデラ湖であることや、透明度が非常に高い理由、そして支笏湖に住むヌマチチブやアメマス、ニジマスといった魚や、ウチダザリガニという外来種が増加している問題について子どもたちに話しました。
(「没入!バーチャル支笏湖ワールド」がついにスタートです。たくさんの親子連れが集まってくださいました!)
(前田裕斗さん扮する支笏湖探検隊長が子どもたちのガイドを元気いっぱいに務めます。)
(真剣に頷きながら、支笏湖探検隊長の話を聞く子どもたち。)
ちょっと難しい地学の話題もありましたが、クイズや映像を挟みながら双方向の解説を行うことで、子どもたちは興味をもって最後まで聞いてくれていたようでした。時には、保護者の方も頷きながら聞き入るトピックもあり、親子で楽しめる解説ができました。
(支笏湖探検隊長の問いかけに、手を挙げる子どもたち。)
(親御さんも真剣に見つめます。)
没入タイム!!〜バーチャルリアリティの世界へ〜
そして、解説後にはお待ちかねのVR映像を視聴する没入タイム!解説の後に、あたかも支笏湖の水の中を泳いでいるような体験ができるVR映像を視聴させることで、最先端のメディア機器を活用した環境教育エンタテインメントを目指しました。
(VRコンテンツ視聴時の注意事項を伝える、岡碧幸さん。)
(丁寧にVRゴーグルをつけさせる、何 玉莹さん。)
(支笏湖のVRコンテンツを体感する子どもを見守る、植村茉莉恵さん。)
VRの扱い方について簡単に説明を受けた後、子どもたちはいよいよゴーグルを装着して支笏湖に「潜り」ます。こちらが思っていたよりも静かに、ぐるぐると周りを見渡すように映像を体験していました。今回は、VRを見ている子どもたちが椅子から落ちたりしないよう、子ども1人に対して補助スタッフが1人ずつ付きました。時折、「何が見える?」と声をかけるスタッフに対して元気に答えてくれます。子どもたちはまるで支笏湖に潜っているような感覚を楽しみつつ、隊長が解説した地形や生き物を次々に見つけていってくれました。
(こちらがVRコンテンツの元素材。専用の動画再生アプリで表示すると、360度の全天球映像として体験できます。)
(思わず指をさしてしまうほどの没入感!)
(何が見える?と子どもに話しかけるスタッフ。双方向コミュニケーションで子どもの理解を深めます。)
(見上げたり見下ろしたり回転したり、VRコンテンツは動くことで見えるものが変わってきます。その様子を長谷川俊さんがあたたかい目で見守っています。)
何が見えたかな?〜シールタイム〜
VR映像を見終わった後、子どもたちには魚や倒木などのシールを、支笏湖の地形を表現したシートの適切な位置に貼りつけるワークに取り組んでもらいました。VRで見えたものの確認と記憶の定着が狙いです。手描きのイラストで作ったシールシートに、補助スタッフの人と相談しながらシールを貼っていきます。何がどこで見えたかを考えながらシールを貼っていく子どもたちの表情は真剣そのものでした。
(手描きのかわいいイラストにシールを貼っていきます。)
(時には親子で相談しながらシールを貼っていきます。)
新技術・360度パノラマ写真でパシャリ!
シール貼りを終えた子どもたちは最後に、360度撮影ができるカメラ“RICOH THETA”で記念撮影を行います。支笏湖の中をイメージした空間でカメラを取り囲むようにして座ります。スタッフのお姉さんの掛け声とともに撮影をする子どもたちの様子は、楽しそうにしつつもどこか不思議そうな表情だったのが印象的でした。
(写真撮影の風景。子ども達は不思議そうな顔で中央のカメラに注目していました。)
(上川伶さんと日下葵さんの掛け声でハイチーズ!不思議な360度パノラマ画像の完成です。まるで支笏湖の中にいるみたい!)
イベントを振り返って
予定していた4回全てのワークショップを盛況の内に終わらせることができました。参加者が多かったこと、イベントが破綻なく進んだことが嬉しかったのはもちろんでしたが、子どもたちが真剣に解説を聞き、積極的に動き回ってVR映像を楽しんでいる様子を見られたのが、私たちにはとても幸せでした。
(足下にいる魚を一生懸命追いかける子ども。360度周囲を全て見られるのがVRの醍醐味です!)
この日のために、夏から準備を重ねてきました。ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。タイトなスケジュールの中で、CoSTEPがこのイベントを実施する意義や目的に何度も立ち戻って考えました。私たちはメディアデザイン実習です。メディアをデザインするプロセスの中で、新しい科学技術コミュニケーションのスタイルを見つけていくのが目的です。そのため、支笏湖を題材に理科的知識への興味を深めること、映像素材を編集し、VRコンテンツの質を高めること、イラストや写真を効果的に盛り込んだ解説資料の作成することなど…デザインの観点で最後まで細部にこだわり抜きました。
特に、「時間と場のデザイン」には腐心しました。各回30分という制限の中で、分かりやすい解説と十分なVR視聴時間を確保する必要があったからです。解説をしてVRを見せる、この手法はともすれば一方通行な知識の押しつけになりかねません。子どもが主役になるようワークショップ全体をデザインした甲斐もあり、アンケート結果を確認すると、その点はクリアできたように思います。
(子どもと一対一でスタッフがつくスタイルは親御さんに安心感を覚えてもらえました。)
今回の成功は、手伝ってくれたCoSTEP受講生のみなさんの協力なしには成し得ませんでした。よいイベントにしたい、子どもたちに楽しんでもらいたい、そんな熱い思いがこのイベントを成功に導いたと思っています。本当にありがとうございました。
[対話の場の創造実習]
才川純一朗さん/橋本慎太郎さん/山本晶絵さん
[ライティング・編集実習]
岩崎祥太郎さん
[「札幌可視化プロジェクト」実習]
越後谷駿さん/堤光太郎さん/好井優衣さん
[研修科]
日下葵/廣島潤子さん
[その他]
服部亮太さん(NoMaps実行委員/クリプトン・フューチャー・メディア株式会社)/手島駿さん(札幌市青少年科学館職員/CoSTEP12期修了生)/関 勝幸さん(ダイビングインストラクター)/Shuang YANGさん
(早岡英介先生にはワークショップの様子を映像で記録していただきました。)
(村井貴先生にはワークショップの様子を写真で記録していただきました。)
CoSTEP12期修了生で、現在、札幌市青少年科学館に勤務されている手島駿さんには、打ち合わせ段階から前日の準備、当日の広報まで、幅広く関わっていただきました。科学館のスタッフとして科学コミュニケーションを実践されている先輩の姿から学んだことが数多くありました。
(12期修了生で、札幌市青少年科学館職員の手島駿さん。お世話になりました!)
今回のサイエンスワークショップは、NoMaps実行委員会からのお声がけにより実現しました。実行委員の服部亮太さんには企画作りの段階からサポートしていただきました。当日はイベントの準備段階からふりかえりの時間までお付き合いいただきました。
(服部亮太さんにはふりかえりの時間で、お言葉をいただくことができました。)
みなさんのおかげでよいイベントにできたことを、この場を借りて深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
(みなさんの素敵な笑顔のおかげでよいイベントになりました!本当にありがとうございました!)
*イベントレポート公開にあたり、参加者の写真及びアンケート結果の掲載許可は事前にいただいております。
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