2017年12月10日(日)、第98回サイエンス・カフェ札幌「メダカの三角関係〜束縛したいメカニズム〜」を、紀伊國屋書店札幌本店1Fインナーガーデンにて開催しました。今回のゲストは薬学研究院 助教の横井佐織さんです。カフェの聞き手は、CoSTEPスタッフの奥本素子(准教授)が務めました。
(ゲストの横井佐織さん(左)と聞き手を務めるCoSTEPスタッフの奥本(右))
日本では北海道以外で普通にみられるメダカ、カフェではこのメダカの行動を通して、私たち人間の恋心が芽生えるメカニズムに迫っていきます。
目のよいメダカ
横井さんと奥本さんのトークは、メダカの目の話から始まりました。メダカというだけあって、メダカの目には特徴があります。人間は赤、緑、青の3色の色覚をもっています。一方メダカはなんと赤を2種類、緑を3種類、青を2種類、加えて人間の目には見えない紫外線、合わせて7色の色をみているのだそうです。しかも、最近の研究ではメダカの色覚が季節によって変化することもわかってきました。このように、視力のよいメダカは、顔をみて相手を認識しています。こんなことも人間と似ていますね。
(積雪の残る12月のカフェにもかかわらず大盛況でした)
相手に割り込むメダカの行動
目で見て相手を認識するメダカのメスは、よく目にして見慣れたオスを交尾の相手に選びます。そのため、メダカのカップルのオスは、他のオスが近寄るとメスとの間に割り込んで、他のオスからメスが見えないようにさえぎる行動をとります。これを配偶者防衛行動といいます。
(お話をする横井さん)
メダカの配偶者防衛行動のカギをにぎるバソトシン
メダカの配偶者行動には、バソトシンとよばれるホルモンが関係しています。カフェでは横井さんが、バソトシンの分泌を抑えたメダカが配偶者防衛行動をとらなくなるという実験結果を、動画を使って示しました。実は同じ機能を持つバソプレシンというホルモンがほ乳類にも存在します。もしかしたら私たちが相手を好きになり束縛したいと思うのも、このようなホルモンの作用なのかもしれません。
(メダカの配偶者防衛行動を動画で説明します)
人間の恋心はホルモンの作用!?
恋人の近くにいたいという気持ちが、ホルモンの作用だとしたら…。3人のCoSTEPの受講生がそれぞれの感想を述べました。「愛や恋が化学物質の作用だとしたらロマンがなくなる」、「むしろ、心の働きが科学でわかるとしたら面白いのではないか」、「人間の恋心は、動物の行動とはやっぱり少し違うと思う」三者三様の考えを手がかりにして、会場の観客と一緒に考えを深めていきます。みなさんは、どう思いますか?
(カフェの感想を話すCoSTEPの受講生)
対話コーナー
休憩後の対話コーナーでは、横井さんが、コミュニケーションカードに書かれた観客からの質問に答えていきます。会場からの質問には、どのくらいの時間メダカは相手のことを覚えていられるのか、なぜメダカは見慣れたオスを相手に選ぶのかといったメダカの行動についての質問から、メダカのみているカラフルな世界を人間は見ることができるのか、横井さんがこれから研究していきたいことはなど、たくさんの質問が挙げられました。横井さんは、一つひとつの質問にわかりやすく答えていきました。