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「URA -大学改革を担う経営マネジメント人材-」(11/15)江端新吾先生の講義レポート

2017.12.12

島崎 俊介(2017年度 選科A/社会人)

今回の講義は、北海道大学URAステーション 江端新吾先生(主任URA)による、「URA -大学改革を担う経営マネジメント人材-」です。URAとは、「University Research Administrator:ユーアールエー」の略で、大学経営や研究支援の中核を担う、教員・事務職員に次ぐ、第3の専門職人材であると言われています。URAは北海道大学だけに配置されているのではなく、平成26年度現在、88機関、791名が全国の大学等に配置されています。

激動の時代における「大学経営のリアル」状況

CoSTEP受講生に、大学経営に関するイメージについて質問すると、「大学経営は事務職員が担当している」、「国立大学は税金で運営されているので、豊富な資金がありそう」といった意見が出ました。しかし、実際には、国立大学の資金源である運営費交付金は年々削られており、各国立大学は自ら資金獲得を行い、自立した大学経営改革が求められているといった背景があります。そこでURAは、大学財務基盤の強化、自己収入拡大、外部資金獲得、科学研究費支援等の大学機能強化に大きく貢献しています。その際には、文部科学省の資料や、科学技術政策に関する資料を読み解き、分析する力が求められます。

「大学経営改革のあり方」とイノベーション

 大学経営改革を踏まえ、大学の設備を最大限活用するにはどのような戦略が考えられるでしょうか? 一例として、北海道大学URAでは、グローバルファシリティセンター設立携わり、学内研究設備の共同利用体制を構築しました。具体例として、試作ソリューション事業があり、北海道大学の利点として、企業と協働で工作機械を使用することで利用料金を徴収できる点と、学内技術職員の技術・ノウハウの継承を促すことができる点があります。本事業により、産学地域と連携し協働することができ、自立的な組織運営体制の構築が期待できます。またグローバルファシリティセンターは、学生、大学研究者、技術者、企業研究者をつなぐ創造の場でもあり、異分野・異業種の研究者や技術者の交流を通してイノベーションを促進する機能もあります。

北海道大学の目指すビジョン・政策

北海道大学URAは、「大学経営マネジメント人材」という役割を担っています。江端先生も研究者だった時の経験、専門の宇宙化学、分析化学の実験機器利用における大学経営問題意識が、URAとして働いている際に役立っているとのことでした。URAの実践している科学技術コミュニケーションとして、学内研究広報、シンポジウムでの人的ネットワーク形成、科学技術人材育成プログラムなど多岐にわたります。多様な経歴を有しているURAだからこそ、多面的な視点でビジョンや政策を立案することができます。

北海道大学URAの目指すものは、「組織としての機能を発揮ささえる集団として北海道大学をデザインする」です。URAは、北海道大学が前進するための戦略を考え、ビジョンや政策を協働で立案することを目指しています。このように、URAは、学内外研究者、教職員、企業をつなぐ、大学における新たな科学技術コミュニケーターとしての役割を担う人材だといえます。

江端先生、ありがとうございました。