サイエンス・カフェ札幌を経験したCoSTEP修了生の活躍
川本 真奈美さん
新たな研究支援「科学コミュニケーション」
北海道大学創成研究機構(2005年当時は創成科学共同研究機構)で、研究者を支援するスタッフとして働いていた私は、CoSTEPが創設されることを知り、科学を伝える技術を磨くことで、新たな業務を切り拓けるのかもしれないと思い、受講生に応募しました。CoSTEPでは、研究者と市民(非専門家)をつなぐための様々な手法、またそれぞれの特性などについて学びました。
修了後、学んだことを仕事に生かしたいと考えていた私は、職場でサイエンスカフェを立ち上げたいと思うようになりました。研究者と市民をつなぐチャンネルはCoSTEPが主催する「サイエンス・カフェ札幌」だけでは、まだまだ足りないと感じていたのです。市民と対話しながら研究を伝え、その反応を直接受け取る機会が増えると、プレゼンテーション能力の向上、仕事へのモチベーションアップ、産学連携のヒントが得られるなど、研究者にとってもプラスになるはずです。
「ペンギンカフェ」そして「北大de Night Café」へ
さて、いざサイエンスカフェを企画しようと思っても、CoSTEP受講生時代、出前授業実習を選択していた私は、サイエンス・カフェ札幌の企画や事前準備にほとんど関わったことがなく、どのようにサイエンスカフェが作り上げられていくのか全く知りませんでした。
ところがCoSTEPを修了して間もなく、同じく1期修了生で、サイエンスカフェ実習を選択していた紺屋 恵子さん、中村 景子さんとともに、新たなサイエンスカフェ「ペンギンカフェ」を創る機会が巡ってきたのです(2006年6月〜)。 「ペンギンカフェ」では、CoSTEP教員の方々や紺屋さん、中村さんに教えていただきながら、サイエンスカフェの企画・運営を実践しながら学ぶことができました。また、毎回試行錯誤しながら双方向性(対話型)にするための工夫をしたこと、ファシリテーターとして司会進行する経験ができたことは、今でも私のかけがえのない財産となっています。
「ペンギンカフェ」で学んだことを踏まえて、2006年11月に職場の同僚や研究者たちと「北大de Night Café」(2006年11月〜)を立ち上げました。これまでに11回開催し、各回定員30名程度の小規模カフェでしたが、「市民の方々とじっくり意見交換できた」、「普段なかなかゆっくり研究の話を聞く機会が無かった同僚(異分野研究者)の話が聞けてよかった」などと演者や企画運営に携わった研究者たちからも好評でした。当時、サイエンスカフェ初体験だった研究者たちも、その後は積極的にアウトリーチ活動に取り組んでいます。特に第1夜の演者だった信濃卓郎氏は転出先の国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構で「北農研サイエンスカフェ「クラークの丘から」」を創設するなど、社会と研究を繋ぐ活動においても第一線で活躍しています。
現在では、研究者のアウトリーチ活動支援や企画・運営も私の業務のひとつとして認められるようになり、様々なイベント等を担当させていただきました。振り返ると、サイエンス・カフェ札幌から派生して、子(ペンギンカフェ)、孫(北大de Night Café)、ひ孫(北農研サイエンスカフェ)の代まで「サイエンスカフェ文化」が受け継がれていったことになります。その後も多くの修了生たちが札幌以外の地でもサイエンスカフェを開催していると聞きます。私も昨年は、札幌国際芸術祭2014連携事業として、札幌地下歩行空間で「北大アーティストカフェ」を開催(9月の毎木曜日、計4回)しました。これからも、研究者の出会いの場を創っていきたいです。そこから何かが生み出されることを期待しています。