選科A 「くまこうせん」
大林 花織、小野 遥、佐藤 弘人、平 早紀、寺田 一貴
私たちの生活は様々な光で彩られています。 目に見える光だけではなく、紫外線、赤外線などの見えない波長の光も 私たちの周りには存在しています。 普段は気にかけないような光も、私たちの生活に彩りを与えてくれているのではないか。 そう考え、私たちは、光たちを音に変えてみました。
イベントポスター・小野 遥 作
今回私たちが開催したイベントは、光を音として感じてもらうセッション。 セッションの舞台上で、様々な「光」にスポットライトが当たるようなイメージでポスターを 製作しました。スポットライトは、可視光として光の三原色の性質を示しています。 電波、マイクロ波、ガンマ線…様々な「光」たちが脚”光”を浴びて、 セッションを作り上げていくという不思議なわくわくを感じていただければ! という想いがありました。光と音に共通する「波」の性質についても、 私たちのコンテンツの根幹となっていた大事な要素としてポスター内に描いています。 是非どこにあるか探してみてください!
光と音はこうしてうまれた
- 「光」を「音」に変換する
セッションで演奏した“光の音“は光と音に共通した「波の性質」に基づいて関係づけました。電波帯域からガンマ線帯域まで、ほどよく音の高さの違いが聞き分けられることそして、聞いていて耳が痛くならないことが両立するように、メンバー内で相談しながら光を音に変換するための数式(音化関数)を決めていきました。音自体はpythonというプログラミング言語を用いて、作っていきました。光の種類によって周波数帯の幅の広さが異なっており、それぞれ重ね合わせる音の数を変えたため、光の種類によって異なる音色が生まれていきました。以上のように光の音への変換は数値的なルールに基づいてうまく変換することができました。
音化関数のグラフ。横軸は対数軸になっています。
わかりやすく動画にまとめたぞ。見てみてな!
- 「光」と「音」を魅せる
続いて、作成した音を動画に乗せていきました。第1部の動画では、日常のいろいろなシーンをくまこうせんメンバーが自ら撮影し、その素材をもとに見えない光の存在を感じてもらえるような構成を目指しました。動画の構成を考える際には、絵コンテを作成して大まかな動画のつなぎ方を話し合い、その上で、音の出す長さやタイミング、表現の仕方などを調整していきました。くまこうせんとしては、「ほら、この光見えてなかったでしょ?」といった説教をしたかったのではなく、身の回りにある光の存在に気付いてもらうことが目標の一つでした。だから、日常生活の情景をベースに、目に見える光から徐々に見えない光へと焦点を当てていく構成にしました。また、その音がどの光に対応しているのかを示す際には、「多くは語らない」全体のテイストを壊さないように、文字情報ではなく、光の発生源を示す同心円状の波形や、それぞれの光の周波数と音量を示すスペクトルといった図形情報で表現するように心がけました。
赤信号の光を発生源として、そこから広がる光を同心円状の波形で示しています。
また、赤色光の周波数とその音量を示すスペクトルも動画下部に表示しました。
第1部の動画のダイジェスト版だ。見てみてな!
- 画像から「光」を読み取る
画像から光に変換する際には「このシーンには(可視光以外にも)〇〇の光が存在しているはずだ」とくまこうせんが読み取りました。例えば、第3部のセッションの一部を切り取った下の画像では可視光だけではなく、電波・赤外線・紫外線の音が鳴っています。これはくまこうせんが写真から「暑さ」であったり、「街並み」の存在を読み取って、表現しました。
第3部のセッションの様子
このように、”くまこうせんにしかできないセッション”という形として仕上げていきました。
くまこうせん、結成から「セッション 〜光を聴く、音を観る〜」まで、
メンバーが舞台裏のすべてを語る
2021年8月29日。選科集中演習Aオンラインイベントの2番目に登場したくまこうせんの 「セッション 〜光を聴く、音を観る〜」は、それまでの会場の雰囲気をガラリと変えるものだった。 場内アナウンスがないまま流れ出す映像とそこから聴こえてくる光の音たち。 身の回りにある何気ない一コマが切り出されただけのはずなのに、 今までとは違う感覚を覚えた人も多かったようだ。 第1部 光を聴く、第2部 光と遊ぶ、第3部 光でつながる・・・ 3部で構成されたセッションを通して、観客と五感でコミュニケーションを取った。 グループ結成から本番を終えるまでの裏側を含め、くまこうせんのメンバーが語り尽くしてくれた。
くまこうせんメンバー
(左上から)Boss、かおりん(左下から)こけ、さっきー、おのはる
くまこうせんの皆さん、「セッション ~光を聴く、音を観る~」お疲れ様でした。「エネルギー」というテーマのもと、なぜ今回のセッションが誕生したのでしょうか?
ありがとうございます。直接お会いできませんでしたが、みなさんと私たちで作り上げたセッション会場の雰囲気や、テーマのエネルギーとともに、セッションが生み出すエネルギーも感じていただけていればとても嬉しいです。
「エネルギー」だけに!(笑) みなさんの身の回りの様々なものがエネルギーを持っていますが、私たちがセッションした「光」と「音」はそれ自体、エネルギーを持っているんです。さらになんと、光と音ってどちらも「波」の性質を持っているんです! この波の性質という共通点があったからこそ、法則を定めて光を音に変換することができました。
こうして光を音に変えることで、”様々な「光」が飛び交っている日常”を、”演奏者が様々な「音」で合奏するセッション”としてお見せする構成を実現していきました。また、ほかにも、今回、セッションとすることで「参加者のみなさんとリアルタイムで作り上げていく」というLive感にもとてもこだわりましたね。
対面でお会いできないからこそ、特に参加者のみなさんとコミュニケーションを取れる仕組みは大切でした。「光」を「音」として体感してもらいたいセッションだったので、みなさんがその「光」たちを手に取って演奏できたような体験になっていれば幸いです!
アンケートからも「今まで意識していなかった光に着目できた」「窓際で視聴していたので、本当に紫外線の音が聞こえている気持ちになった」「たくさんの光が交差している感じがした」という点で参加者のみなさんは印象に残ったようでした。音として体感していただくことで、「見えない光」が「見える」という体験を提供する、ということは私たちの意図でもありました!
完成したセッションには独特の演出が散見されましたね。
見えない光に気づいてもらうには、くまこうせんからの一方的なメッセージだけでは伝わらないと、悩みましたね。
みなさんの気持ちにぐっ!とはいる何かが必要、でも、オンラインなので、できることは限られていました。そこで、会場のみなさんにも一緒にセッションに参加してもらって、光を自分で感じてもらおう!としたんですよね。
こうして創ったのが第2部と第3部でした。第2部では、みなさんにステージに上がってもらって光を音に変えて遊んでもらったんですよ。どれくらい参加してくれるか結構心配だったけど、めっちゃ手が挙がって、すごく嬉しかった。
絵文字チャットも大盛り上がりで、第1部の終わりから会場全体が一つになったなって感じることができました。
ステージに立てる人は限られてしまうけど、絵文字チャットのおかげでみなさんが参加できたのがよかったです。
絵文字チャット、ご参加いただきましてありがとうございました。
第3部は、イベント前にみなさんから送ってもらった画像を使ったセッションでした。くまこうせんが、みなさんの日常に入り込んで「こんな光もいたよ!」って気づいてもらいたかったけど、ちょっともやもやってした部分もあったようです。
それも学びでしたね。参加してくれたみなさんからたくさんの学びや気づきをいただきました。そんな双方向の学び合いのサイエンスイベントをこれからもみなさんと一緒につくっていきたいです。
くまこうせんからみた、みなさんの画像
セッションの背景にはやはり様々な想いが詰まっていたようですね。ファンの皆さんは早速次回公演の予定が気になっているようですが?
ありがとうございます。アンケートにも多くの回答をいただき、くまこうせんメンバー一同お礼申し上げます。今回のセッションでは、光を音として感じるというアイデアが新しい、面白いというメンバーにとっては非常に嬉しいご意見を多くいただきました。次回以降も切り口が斬新だなと思っていただけるような企画ができたらと思います。
アンケート「イベントを通してモヤモヤしたことは何ですか?」に対する回答。
この図はアンケートでいただいた「わからなかったこと、モヤモヤしたことはなんですか?」の回答で、使用された回数の多かった文字を大きく表示し、さらにその文字と関連づけて記述されているもの同士を線で結びつけたものです。光や音の変換についてモヤモヤした人が多かったこと、また、そのモヤモヤの種類に多様性がみられることがわかりました。
今回のイベントで、みなさんに何かしらの疑問やモヤモヤを感じてもらい、各々が考える・調べる・意見を持つ、といった行動変容のきっかけを作りたいという想いがあったので、このアンケートの結果も私たちとしては嬉しい結果でしたね!
一方で、第2部でのセッションでは意外と静かだった、物足りなさを感じた、という感想もいただいたので、次回はもっと解釈のルール化を整備したり、音の種類を増やしたりして、進化させたいですね!
それから、一部の参加者の方々にお願いして、実は振り返りの座談会を行いました。参加いただいた皆さまには、この場を借りて改めてお礼申し上げます。日常にあるもので宇宙を演出している点や、信号機の採用や環境音との重ね合わせなどはいいね!を頂きました。ですが、サイエンス視点でのルールの伝え方への工夫といった課題もいただきました。
参加者がテンポもつくれるような対面イベントや、「音を観る」にフォーカスして聴覚障害の方とも何かイベントができないか、という話題も上がり、”セッションは終わらない”という雰囲気が良かったですね!
次回は、”モヤモヤさせたい”ことと、”誤解を与えない”ことの両立をもっとパワーアップさせた”セッション”を企画していきますね!
〜インタビューを終えて〜
くまこうせんメンバーはお互いに随分親しい印象を受けますが、8月頭が初対面だったんですよね?
そうなんですよ!最初の集中演習でぐっと距離が縮まったと思います。
だね!これはPlayfulなチームだ、これなら行けるわ!と感じたわ。
チームのスタートは良かったけれど、その後、イベントの方向性やどのように表現するか?については、かなり頭を悩ませました。オンラインで何時間も議論を行うことで少しずつクリアになっていきましたね。
時間は掛かりましたが、全員でアイデアを出しながら作り上げる方法が私たちには合っていたと思います!
音や動画もメンバーで確認しながら、形にしていったんですよね。
最初はどんな音か想像つかなくて、ずっとモヤモヤしていたんですが、あるとき「なるほど!」と腑に落ちた感覚がありました。
アンケートにも「(光と音の)自分のイメージとあっている」というコメントが見受けられ、光って聞いたことないはずなのに、音のイメージがあって面白いなと感じました。
渋谷のスクランブル交差点で、信号機だけ撮ってる変なおっさんになってないかと汗かいたり、まあ、色々あったよね。
私が撮影した電子レンジの動画は、周りに物が散らかっているように見えるけど、あえてそのまま撮影することで「日常感」を壊さないようにできました!
片付けるのが面倒だったんじゃなくて?(笑)
まあ、それは、、、断じてないです!
…宇宙のシーンの撮影も宇宙空間は撮影できなかったんだけど、身近なものを使って宇宙空間に例えて撮影しようってなりました。
宇宙は「遠い存在」な気がしますけど、実は私たちが生きている身近な場所ですもんね。フリー素材を使うのではなく、家にあるもので表現できたのは良かったです。宇宙を研究しているかおりんの家だからこそ、いろいろ充実してはいましたが…(笑)
楽しくMTGするくまこうせん
そうしたくまこうせんメンバーの個性や強みが集まって、今回のセッションが完成したわけですね。次回公演も楽しみにしています。ありがとうございました!
本記事は、2021年8月29日(日)に実施した2021年 選科Aオンラインサイエンスイベント「energy」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、対面でのサイエンスイベントをいちから作り上げる4日間の集中演習を行っています。今年度は、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、企画から実施まですべてオンラインでの開催となりました。20人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、他の活動報告もぜひご覧ください。
・選科A活動報告「宇宙を旅する超高エネルギー ニュートリノ 〜見えない素粒子を数字で感じよう!〜」
・選科A活動報告「未来百貨店~エネルギー問題から考えるトランスサイエンス~」
・選科A活動報告「Take Out & Eat Energy 〜満腹にならない私たち〜」