実践+発信

済州島で国際交流ワークショップを開催しました

2019.10.1

8月28日から9月1日まで韓国済州島で開催された国際交流ワークショップ「AAA Project」を開催しました。AAA ProjectはAsia Art Agroforestryを頭文字をとったプロジェクトで、「混農」をテーマに国籍も専門も異なる日韓の学生が一つの都市に集まり、同じテーマについて企画を提示することで交流するワークショップです。2018年には本科「札幌可視化プロジェクト」実習が参加し、「水の循環」と観光をテーマにワークショップを行いました。その成果はドキュメンテーションでまとまっています。2017年には札幌で開催し、CoSTEP全体で受け入れました。「ペルソナ」をテーマに、仮面をつくって大通でゲリラパフォーマンスを行う内容でした。その様子はドキュメンテーションにまとまってあります。2016年にはソウル開催で、本科「札幌可視化プロジェクト」実習を中心に本科の受講生が参加しました。「高齢者の孤食」と技術を結びつけることで社会問題を解決できることを目指しました。

済州島でビーチクリーン活動をしている活動家からの済州島の現状について話を伺いました

今年のテーマは「ゴミ」でした。観光地である済州島のゴミ問題は、他の観光地と同様、日々深刻になってきています。持続可能な済州島を考えることは、済州島だけの問題ではなく、地球全体の問題として考えることにつながります。このワークショップでは、日韓の多様なバックグラウンドを持つ学生と考える場を目指しました。

済州現代美術館で行われた展示「2019 国際生態美術展 Ocean – New messengers」を鑑賞しました

場所は韓国済州島、ハンラ大学コンベンションセンターをベースに、済州島各地のフィールドワークの場所を訪れました。参加大学は4つ、韓国芸術総合大学済州ハンラ大学、北海道大学 CoSTEP、大阪工業大学 情報メディア学科で、教員と学生を含め、40名が参加しました。5つのグループに分けれてワークショップを進めました。

全体で訪れた陶芸家のスタジオ。島の環境との共存を考えて伝統的な焼き物を制作している場所で、一般公開しない所なので、貴重な体験でした

内容

  • 済州島を対象に、世界各国の観光地が持つ人間と自然との関係、ゴミ問題を元にグループワークを行い、持続可能な環境を考え、問題解決につながる企画を提案する。
  • 韓国のペットボトルの水シェア率No.1の済州三多水(サムダス)の協力を得て、工場見学や水の利用ができる。ペットボトルを題材にする。
  • 東アジアの他都市にも適応できるコンテンツを開発する。
  • VRやセンサーの技術を用いることができる。グループごとに合う技術を使用すること。

済州島でアップサイクリング(ゴミを用いたものづくり)をしているスタジオ「ジェジュドジョア(재주도 좋아)」を見学しました

建築家(在日韓国人2世)伊丹潤のノアの箱舟をモチーフにしたバンジュ教会を見学しました

全体の焼く肉パーティー

各グループの名前から、日韓共同ワークショップであることが感じられました。共にゴミ問題を考えるという意味で、日本語の「ゴミ」と韓国語の迷いを意味する「고민 ゴミン」を合わせた「ゴミゴミン」チームや、韓国語で「私たち」を意味する「우리 ウリ」と日本語の「海」を合わせた「ウリウミ」チーム、日本と韓国に存在する「あまさん」に注目してゴミ問題を解決しようとすることで韓国語の「アマド(たぶん)」とかけあわせた「アマとJeju」のチーム名が印象的でした。

済州島の町ごとに設置されているリサイクルセンターを見学しました

グループごとに、また全体のツアーとして、済州島の各地に訪問し、ビーチクリーン活動を含めた様々な活動を行いました。

ビーチクリーン活動で集めたゴミ。日本や中国、台湾から流れたゴミも多くみられました

グループワークの様子

今回のワークショップは、韓国の飲み水販売のトップをシェアする「三多水」の協賛を受けて開催したものです。課題の中に、その水やペットボトルの再利用について積極的に考えるとの条件がありました。その問題も含めて、2回の中間講評を経て行った最終プレゼンテーションでは、個性豊かで現実的に適応可能なアイデアが広がりました。

A. 三多水のラベルにQRコードを入れることで JEDチーム
ゴミを処理しなければいけないものから、処理できる道具として価値をもたらした視点が、持続可能性につながるアイデアでした。

B. 済州島にあるリサイクルセンターをフィールドにし、ゴミを捨てると音がなるようにし、ゴミを捨てる行為にエンターテインメント性をもたらしたOKCチームは、reuse/ recreateを加えて考え、使い捨て品を意味する「일회용품」に「音」という文字を入れ、「일회용音」と企画のタイトルを決めたところも、アイデアが一目でわかるようなアイデアでした。

C. ペットボトルのラベルに折り線を印刷し、ペットボトルを携帯できる取っ手にするアイデアを出したウリウミチーム。なぜゴミをゴミ箱に捨てないかという問題意識から、ゴミを捨てにいくこと自体に参加者の個性や遊び、クリエーションの視点を取り入れたアイデアでした。

D. ペットボトルの使用自体を減らすため、水ステーションをスーパーマーケットやコンビニに設置し、空港などでタンブラーを無料貸し出しするアイデアを出したゴミゴミンチーム。道民と観光客の視点をそれぞれ区別して、データを元に考えたところが、持続可能性につながる企画でした。

E. 捨てられるゴミの大半を占めるペットボトルを見える化するために、ペットボトルの蛍光顔料をつけ、夜の海や海の中でゴミが光るようにするアイデアを出したアマとJEJUチーム。済州島の文化であるあまさんの取材から生まれたアイデアであること、ゴミの風景に対する認識を変換できたことが評価されました。

CoSTEPから参加した12期修了生の三幣 俊輔さんのコメント

最終日に全体の前で感想を語る三幣さん

2回目の参加となった本ワークショップ、1回目の参加から3年が経過し、自身の立場も学生から社会人へとステップアップしての参加となった。今回は途中からの参加になったこともあり、グループ活動では、自身が積極的に実作業を推し進めるのではなく、作業が円滑になるように場を整えることを主眼として参加してみた。目線を変えると見えるものも変わってくる。各メンバーの背景も言語も異なるこのワークショップでは、発言したいことや議論に追いつけていないことがあっても言い出せないとメンバーが感じている場面がしばしば発生する。そんな周囲の状況に注意を払って議論が円滑に進むように場を作る立ち回りはあまり経験がなく、自身にとって良い学びの機会となった。そして、忙しさに追われ物事をじっくりと考える機会が減っていた近頃においては、異なる視点からコメントをもらい、特定のテーマについて考えられるこの時間は貴重だったように思える。普段とは異なる土地で、日常では考えないことを、初対面かつ背景の全く異なるメンバーと共に考え、一つの形にまとめ上げられるように打ち込んでいく。そんな時間を過ごすことができた済州でのワークショップは、私にとってとても充実した3日間であった。

ゴミ問題はただ一つの地域や国の問題ではないこと、それを解決するためには多様な立場の人々が集まって考え続けなければいけないことを実感するワークショップでした。考え続けるために、友達になって、お互いの文化を理解することから始まることに気づいたという参加者からの意見がありました。特に、政治や経済的な壁は高い2019年の今であるこそ、より意味深いワークショップだったかと思います。