実践+発信

「学ぶことは生きること病院内学級の現場から~」(12/16)副島賢和先生講義レポート

2021.3.18

細谷 享平(2020年度 本科/学生)

モジュール5「多様な立場の理解」第2回は、病気の子どもたちとのかかわりについてのお話です。講師の昭和大学准教授 副島賢和(そえじま・まさかず)先生は、かつては担任の先生として、現在は大学教員の立場でアドバイザーとして、入院している子ども向けの学校である「院内学級」に長年携わってきました。院内学級で副島先生が子どもたちに伝えたいメッセージ、それは「自分をもっと大切にしていい」ということです。

(副島先生には、院内学級の教室からzoomでお話いただきました。背景のクリスマスツリーは院内学級の生徒の手作りだそうです)

子どもにとっての喪失

「欲求が満たされない」「大切な人を失う」「大切なものを失う」「夢や理想を手放す、失う」「自身の尊厳を傷つけられる、失う」副島先生はこの5つが子どもにとっての喪失だと言います。これらの喪失から子どもを守り、子どもの尊厳や権利を保障することは、その子が病気かどうかにかかわらず大切なことです。しかし同時に、病気のために喪失に打ちひしがれている子どもが大勢いるのもまた事実です。

(副島先生は子どもにとっての喪失として5つの項目を挙げます)

病気の子どもとのかかわり

病気の子どもたちの中には、例えば自分が病気のために両親に迷惑をかけているという罪悪感から、自己を否定してしまう子どもたちがいます。そんな子どもに対し、「私たちは子どもの力を奪うかかわりをたくさんしてきた」と副島先生は言います。「泣かないで」「大丈夫、夢や希望をもって」「もっとこうしなさい」「言った通りにすればいいのよ」これらのメッセージは「『今のあなたはダメ』というメッセージになってしまってはいないか」と副島先生は問いかけます。

上記のメッセージでは、エネルギーにならない子どもがいます。「自分は役に立たない」「自分は愛される価値がない」と思ってしまう子どもたちに対して、「教育を使って、あそびやまなびのかかわりを通して、肯定的な自己イメージを育てたい」、副島先生は祈るように言います。

(副島先生は「これが自分の仕事だと考えている」と話します)

今を大切にするかかわり

子どもたちに「自分が大切」と思ってもらうために、副島先生は今を大切にします。それは今を生きている時にエネルギーがたまるからです。子どもが、何か食べて美味しいという顔をした時には「美味しいね」と伝え、悲しそうな顔をした時には「なんだか悲しそうだね」と伝えます。その子の今の感情を言葉で表現することで、「あなたの感情は受け取ったよ」と伝えます。その一方で、感情を全て受け止めた後で、「ダメなものはダメ」「やらなくてはいけないことはやりますよ」と伝えます。それはその子たちを守るためです。そうして副島先生は、「あなたはあなたのままでいいよ」というメッセージを送り続けます。

(「家族でこれをやるのは難しいけれど、だから教育や医療や福祉や地域や、周囲の人たちに手伝ってもらいながら子育てをしているのではないでしょうか」と副島先生は語ります)

おわりに

「誰かの辛さを受け取るのは大変なことです。それを受け取るためには、皆さんお一人お一人の中にある辛さ・悲しさ・苦しさを受け取っていただいて、今浮かんでいる感情・味わっている感覚を大事にしてくれる仲間を作っていってください」副島先生からの温かいメッセージで講義は閉じました。

講義の90分は、副島先生の柔らかでありながら臨場感のある語りに惹きこまれ、病気の子どもたちに思いをはせると同時に、自分自身の周囲の人とのかかわり方について考えなおす、大切な90分となりました。副島先生、ありがとうございました。