実践+発信

ヤマメシデザインレホート / 後編_ヤマメシキットができあがるまで

2021.4.9

ヤマメシデザインのレポート、後編です。(前編はこちら)こちらでは、ヤマメシイベントで参加者の方に事前に送付したキットの作成について紹介します。

若狭遥(本科 アート&デザイン実習 / 大学院生)

キット作成スタート

まずは、キットに必要な内容物や役割について対話班と話し合いながら整理しました。キットのテーマは、「ヤマメシから広がる、ちょっといい世界」。

キットの役割として求められることは、

  • 参加者が、ワークに必要なアイテムをゲットできる
  • 参加者が、ヤマ気分、わくわく感を味わうことができる
  • zoom越しのイベントでも、みんなで行っている気分を味わうことができる

この点を踏まえて、キットの作成がスタートしました。

 

キットの内容を大まかに決める

まずは、キット全体の内容を決定しました。ピンタレストで「カード」や「キット」、「飛び出す絵本」などなど、検索しまくり、「やりたいこと全部盛り!」のキットのイメージを作りました。

目玉は、画像左下の飛び出す絵本。「小さくたたまれている本を開く」という行為を通して、「アッと驚く世界」を提供したいと考えていました。

また、自宅で山の雰囲気を味わうことができるよう、木の枝やドライフラワーなど、自然物を入れることができればいいなと想像していました。


また、キット全体のモチーフやキーカラーについても検討しました。チラシに登場していた、山のモチーフと、メシヤマのアイコンをメインで使用することにしました。また、キーカラーはチラシと同様の山吹色にしました。

 

ワークシートのデザイン

「飛び出す絵本」のイメージをもとに、ワークシートの形を作成していきました。

ワークシートは、ヤマメシイベントにおいて、おうちで作るレシピをもとに、オリジナルのヤマメシレシピを考える際に使用するものです。

 

  • イメージ試作

    まずは、手書きでワークシートに載せるべき情報やその配置、ワークシートそのものの形や使い方について検討しました。ワークシートが小さくたたまれた状態から開いて立体的になるようにするにはどうすればいいのか…。ワークシートにはどのくらいの文字量を載せることができるのか、そもそもワークシートの大きさはどのくらいがいいのか。試作してみて、初めて大きさの感覚をつかむことができました。

 

  • イメージ試作(Illustrator)

    前述の試作をIllustratorにおこし、組み立てるとこのようになりました。パソコン上でワークシートを見るのと、実際に印刷して見るのとでは全く印象が異なります。「この部分の文字は大きすぎるな」とか「イラストの配置をもう少し、ずらそう」など、印刷して修正を繰り返します。

 

  • ワークシート改変

    立体になるワークシートには、イベント中にパソコンの横に置いて使用するにはサイズが大きいという問題がありました。また、A3用紙を貼り合わせて作成する必要があったため、紙と紙の継ぎ目が汚くなってしまう懸念がありました。そこで、新たな案として、A3用紙を折るワークシートができました。茶色の紙がワークシート本体です。白い紙を上にかけ、左右にスライドさせることで、おうちレシピが見えるように工夫していました。
  • 上記の案をIllustratorに落とし込んだものがこちら。内面の山の景色の写真がお気に入りです。

デザイン作業が始まって以降、Illustratorの技術がずいぶん向上したように感じます。しかし、このワークシートにもたくさんの問題点がありました。まず、白い紙をスライドさせづらく、イベントに集中できないこと。また、折り目が文字情報とかぶってしまっています。

 

  • 最終形態
    さらに改善したワークシートがこちらです。情報が折り目にかぶらないようにすることはもちろん、情報の種類ごとに紙が分かれています。茶色の紙にはおうちレシピ、白の短冊にはイベントの概要、茶色の看板型の画用紙にはイベントの行程が記載されています。また、折りたたんだ状態ではメシヤマが窓から、ちらりしています。組み立てるとこんな感じ。三角の紙がまるで山のように見えます。

 

ヤマメシブック

ヤマメシのレシピを掲載した、「ヤマメシブック」も作成しました。このブックに掲載されているレシピを参考に、参加者の方にオリジナルヤマメシレシピを考えていただきます。また、「イベントが終わった後にもお土産のように使ってもらいたい」という対話班の要望がありました。

こちらはヤマメシブックの変遷です。ワークシートにドッキングして使えることを想定していたので、ワークシートの変化に合わせてサイズが変化しています。

レシピ部分はこのようなデザインの変遷でした。最初は画像を右ページ全面にしていました。チラシに用いていた点線の丸や黄色のボックスを用いて、統一感を出しています。右下の丸には、オリジナルレシピを考える際のヒントになるポイントを記載しています。

画像を正方形にし、右下の丸とバランスがとれるように修正しました。また、ここでもメシヤマを登場させています。

 

市販のレシピ本も参考に、材料や作り方を配置しています。


こちらが完成版の冊子です。生まれて初めて冊子を生み出しました。想像以上に、しっかりした作りで、自分たちでデザインしたと思えなかったです!

ヤマメシール

参加者の方がオリジナルレシピを考案する際に使用できる、シール(ヤマメシール)も作成しました。私の手書きのイラストをここでも使用できてうれしかったです。

 

キット封入

参加者の方に送付するキットは、すべて手作業で封入しました。ワークシートに穴をあけて、折り、セットする…。計50個のキットを作成しました。

キットを封筒から取り出すとこのような形。中に何が入っているか、期待が高まると良いなと思って包みました。

キットに添えた枝は、北海道大学 総合博物館の中谷宇吉郎の研究室から中谷博士が眺めていた梅の木、本物の枝。梅の花が咲く春を待ちながら、冬のヤマメシをもらいたいと思いました。

 

ヤマメシイベントのデザイン作業全体を通して

最も学びになった部分は、「調べ、手を動かす(行動する)」ことの大切さです。

ヤマメシのことを何も知らない状態から始まったデザイン作業。ヤマメシについて調べ、作ってみることでデザインに変化がみられることはもちろん、自分自身の世界が広がりました。このデザイン作業に携わることがなければ、一生ヤマメシを作ることはなかったかもしれません。

また、キット作成が始まってからは、さらに手を動かすことの大切さを認識しました。パソコン上では「よくできた!」と思っていたワークシートやヤマメシブックも、実際に印刷してみると「なんだか違う…」。このくり返しです。参加者の方の手に渡る形で何度も何度も確認する。デザインだけでなく、すべての仕事においていえることだなと思います。

そして、共有することの大切さを感じました。対話班と一緒にヤマメシデザインを進めている以上、こまめな情報共有が大変重要であると認識しました。「いつまでにデザインを完成させたいから、この日までに情報がほしい」や、「ここに掲載する情報は本当にこれでいいのか?」というように、その都度コミュニケーションをとり、できる限り誤解のない伝え方をしていくことの大切さ、うまくいかないもどかしさも感じました。実際に会ってかわすコミュニケーション、Zoomでのコミュニケーション、Slack上でのコミュニケーション。複数の方法で、それぞれに必要な意識や準備が異なると感じました。

最後に。
ヤマメシイベントのデザイン作業では多くのかたに支えていただきました。対話班の方々には、何度もフィードバックいただき大変勉強になりました。会議を重ねるうちに、「一緒にイベントを作っている!」という意識が芽生えました。実際に会って、キットを作成した時間がとても楽しかったです。
参加者の方からは、「キットが届いたときとてもわくわくした」や「ワークシートが山の形になることに驚いた」という声をいただきました。デザイン作業中はうまくいかないことのほうが多く、悩むことも多々ありましたが、うれしい声をいただいて、「ああ、作ってよかったなあ」と感じました。

そして、たくさんの時間を割いて指導してくださった朴先生。かゆいところに手が届かない(?)私のデザインに根気強くアドバイスしていただきました。デザイン作業を通して朴先生と過ごす中で、朴先生のお話している内容がよくわかるようになった気がします。

皆様、ありがとうございました。とても楽しい2か月と少しでした。