10月5日にはモジュール6「トランスサイエンス」の講義が始まりました。その第一回目は、北海道大学大学院環境科学院教授の山中康裕さんに、「地球環境問題における『連携』『協働』の重要性」と題してお話いただきました。
山中さんは今年4月、所属する北大大学院環境科学院に「実践環境科学コース(PractiSE)」を設立し、地域の問題を市民と考え行動する環境科学の専門家を育てています。
山中さんのご専門はもともと、海洋における生態系が気候変動によっていかに変化するか、コンピューターを使ってモデル化し、そのメカニズムを科学的に解明すること。その研究成果が、国の各種報告書や「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告書に掲載されています。国内外の第一線で活躍する研究者がなぜ、そうした人材育成コースをつくるにいたったのでしょうか。
今回の講義で山中さんは、まず地球温暖化問題についてコンパクトに紹介しました。だれがCO2を減らすべきかという問題は、まさにトランスサイエンスの問題。国、貧富、世代、リテラシーなどの違いで、さまざまなステークホルダーがあり、たいへん難しい問題をはらんでいます。
山中さんは、そうした問題関心のもと、2008年にグローバルCOEの拠点リーダーとして、環境科学の研究者や実務家の育成を行うことになりました。研究者として評価されるよりも、「人を育てたい」という、教育への強い思いが感じられました。
一昨年度は、多忙な仕事を精力的にこなしながら、科学技術コミュニケーションを学ぶために、大学院生や社会人といっしょにCoSTEPを受講されました。この4年間で「人生が何度も変わった」といいます。
そして今春、「大学が社会とともに『社会に何かを生み出せる人』を育てたい」というコンセプトで、環境科学の素養があり、地域に貢献できる若い人たちを育てるために、環境科学院に「実践環境科学コース」を設立したのです。リゾート会社と大学が環境教育の実践の場をともに創り上げた「トマム雲の学校」をはじめ、いくつかの「提案型インターンシップ」の実施を通じて、受講生は実践的に学びを深めることができます。
「山中さんに会って、とてもよかった」と人に言われることに、なによりも感激するとのこと。今後もそのバイタリティで、地域社会と大学をつなぐ教育実践を続けてくださることでしょう。