実践+発信

選科A活動報告「多事争論 巡る生殖補助医療」

2024.9.7

グループ:G.G.
メンバー:はぎ ぐんじ いつき よっしい てつ みきてぃ

  • イベントのねらい

生死に関わる科学技術は、社会の広範囲に影響が及ぶ。
今回は生殖補助医療を題材として、“サイエンスコミュニケーションの逡巡”を考えたい。

  • ポスターデザインのねらい

“逡巡” は自分達の議論によく現れました。
生と死、どちらをテーマとするかから始まり、「生」に決まった後も何をどこまで話すか?について、堂々巡りの議論と思われるほど、同じことを何回も話しました。ただ、回を重ねるごとに少しずつ深い意見・視点が出て、話す覚悟が醸成されていきました。
明瞭な意見の違いを表現するために、白黒(モノトーン)を基調に。
生殖補助医療技術には変えられない大まかな流れはあるものの、行く先(未来)とその周辺への影響が不明瞭ですので、遠くがぼやける山水画風のイラストを選びました。
時間のほとんどを議論に費やし「多事争論」という漢字のタイトルにしたことも、水墨画を選んだ理由の1つです。

[ポスター担当:ぐんじ]

  • イベント制作の裏側

「“LIFE”とは?」「好きなものは?」
広いお題に対しメンバーそれぞれが付箋を作成。テーマを話し合いました。

6人それぞれの“LIFE”

教育、生、死、選択の自由。
一言にすると6人の考えが同様かのようにも聞こえますが、相違も多く、何のためにどのようなイベントにしたいのかが問われます。


1日目の企画書:“生”と“死”、想いが発散してまとまらない

1つの科学技術について、背景の異なる者同士が議論することで発生する、“発見”と“伝え合う難しさ”。これを考えるきっかけを持つことこそ、6人の願いだったのかもしれません。


“他者から学ぶ発見”と“伝え合う難しさ”の同時多発に直面する6人

  • イベントの内容

とある役所にて、「生殖補助医療」について市民向けイベントを開くことに。

担当職員らは、生殖補助医療についてもサイエンスコミュニケーションについても明るくない。
そこで生殖補助医療の研究者を招き、更にYouTube LIVEにてサイエンスコミュニケーターの方々にご参加いただき、アンケートにご協力いただくことにしました。


YouTube LIVEにて、会議を中継

生殖補助医療研究の現状に対する、研究者の持論。
社会的・倫理的な側面から生じる、役所職員らの懸念。
最新の研究報告事例も題材にしながら、市民向けのサイエンスイベントをどのように設計するのがよいか、議論を進めます。


最新の学術論文を題材に、安全性研究の今後の方向性について議論する様子

どうしたら“良いコミュニケーション”になるのか?
生殖補助医療に関する市民イベントをすることは、是か非か?
個々の背景によって意見は様々。
このままでは市民向けイベントを企画することは難しい。

そこで、YouTube LIVE先にいるサイエンスコミュニケーターの方々に、
生殖補助医療について「イベントを開いたことがあるか」「イベントを開いてもよいか」を聞いてみることに。

アンケートは即確認できるslide.com を使いました。


slide.comにてアンケートにご協力いただく


アンケート結果をその場で確認

結果、9割以上の方が「生殖補助医療についてイベントをしたことがない」こと、また同じく9割以上の方が「イベントの企画は行うのがよい」と考えていることが分かりました。


YouTube画面の外の様子。時間管理、アンケートの反映状況を見守るメンバーと先生方


配信中、YouTubeLIVEに寄せられたコメント

まだ活発ではないのかもしれませんが、今後、機会創出が望まれる分野、ということでしょうか。

アンケート結果に勇気をもらいつつ、役所ではより慎重に議論すべく、決議は次回へ持ち越しに。

最後は『多事争論』で締めました。

15年以上前の某ニュース番組の構成と酷似してますが、気にしない、気にしない。
市民イベントの開催企画というミニドラマ風に仕立てて伝えたかった事、つまり、生殖補助医療を例として影響が広範囲に及ぶ「生死を扱う科学技術」の伝え方・判断の難しさに関して、視聴者の頭の整理に役立つよう簡潔にまとめました。


多事争論

  • アンケート結果

本イベントは直前まで議論が難航し、アンケート項目の設定にも苦戦しました。
その中でもアンケートにご協力いただいた皆様、誠にありがとうございました。


回答者の約半数が、サイエンスイベントを主催したことのある方々でした

主催経験者の内、一部の方々は、センシティブな話題を扱ったことがあるとのことでした

この方々には更に、体験談を教えていただきました。

センシティブな話題を扱う際は、多角的な視野で調査を行うこと、意識的に俯瞰することが大切になりそうです。次回のイベント制作では、いただいたご指導を活かし、更に質の高いイベントを目指します。

 [アンケート担当:いつき]

  • イベント制作を通して学んだこと

はぎ「議論し続けることの楽しさと大変さ」
ぐんじ「専門家と厳しい現実とに相対するための議論」
いつき「やるせなさと虚無感と悔しさを受け入れる」
よっしい「何かを成し遂げるには、最後まで諦めない」
てつ「議論を尽くしちゃんとまとめる挑戦から逃げない」
みきてぃ「聴くこと、伝えることの難しさ」


3日間お疲れ様でした!

イベントにご参加いただいた皆様、ご指導してくださった朴先生とCoSTEPの皆様、ありがとうございました。

本記事は、2024年7月15日(月/祝)に実施した2024年 選科Aオンラインサイエンスイベント「LIFE」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。24人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。報告書ができ次第、以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告もぜひご覧ください。

選科A活動報告「多事争論」
・選科A活動報告「殺す?」
選科A活動報告「NO CHOICE NO LIFE」(本記事)
選科A活動報告「“生きる”かたちの新提案」