実践+発信

チラシデザイン:自在の翼を手に入れろブルーインパルス飛行技術と不安定からの数学的発想(2/3)

2016.2.9

デザイン、満を持して始動

チラシおよびポスターの本格的なデザインが始まったのは、12月に入ってからだった。まず、もともと抜群にカッコ良いブルーインパルスに下手な細工は無用だということで、ベースには写真を用いることにした。また、当初から私はデザインの中に「直線」を生かしたいと思っていた。「直線」はブルーインパルスの噴射する真っ直ぐなスモークに通じるだけでなく、ブルーインパルスの速さ、正確さ、硬質感を象徴すると感じていたからだ。更に、何か今までにない新しいことをしたいなと思っていたところ、ふと「銀の箔押し」をするというアイディアが浮かんだ。

箔押しとはチラシの上に銀折り紙のようなキラキラした箔を乗せる技術で、箔押しのメタリック感はブルーカフェにはぴったりである。果たして箔押しなど可能なのか不明であったが、まずはイメージをカタチにすることが先決だと思い立ち、印刷した写真の上にアルミホイルをペタペタと糊で貼り付けていくつかの試作品を完成させた。試作品は、直線で画面をいくつかのスペースに分割し、その一部にアルミホイルを貼ったものとなった。こうしてできた試作品をデザイン実習の指導教員である大津珠子先生の元へ持って行き、おずおずと

「あの・・・チラシの紙にキラキラの箔を入れるというのは可能でしょうか?」

と尋ねてみた。すると、確かに費用は高くつくが箔押しは可能で、ブルーカフェが年明け最初のカフェであるため縁起も良いということで、意外なことに即座にOKが出たのである。

(チラシに使うことになった写真)

(最初の試作品。画面を直線で分割し、一部にアルミ箔を貼っている。)

タイトルはコトバのデザイン!

チラシの大まかなレイアウトが完成した頃、まだ一つ、極めて重要なことが決まっていなかった。それは、カフェのタイトルである。タイトルは、お客さんがそのカフェに来るか来ないかを判断するとても重要な要素の一つだ。まさしくイベントの顔とも言うべき存在であり、しかも今回はタイトルを抜き文字にする形の箔押しの予定だったため、非常に目立つことは確実だった。

タイトルについてブルーカフェ企画者の一人である川本思心先生に尋ねに行ったところ、とりあえず皆で思いつく限りのタイトルを出してみようということになり、しめた!と思ったのであった。かねてから私は、『このチラシにはこんなタイトルが似合うなぁ』と妄想しながらデザインをしていたので、それを採用してもらうチャンスを逃す手はなかった。「不安定に学ぶ安定の発想」「不安定は大空へのキップ」といったタイトルのほか、「手に入れる」というフレーズや「思考と飛行で韻を踏む」といったアイデアなど、今まで心に溜めてあった考えを、ここぞとばかりに大放出した。

ブルーカフェメンバー間での議論の結果、私のアイディアのエッセンスは存分に盛り込まれ、メインタイトルは「自在の翼を手に入れろ」に決定した。タイトルはブルーインパルスのスモークと平行になる形で、帯状の銀箔の上に乗せられることになった。タイトル文字が右上がりなのは、チラシの画面に躍動感を持たせるためと、皆さんの今年一年が常に右上がりになりますように、との願いを込めたためである。

(完成したチラシ。タイトル背景の灰色の帯部分は、銀の箔押しが入る。)

遂にチラシが納品!イメージが現実に

かくして、約半年間格闘してきたブルーカフェのチラシは完成し、1月上旬、ついに納品される日がやって来た。チラシの出来はそれはそれは素晴らしいもので、真っ青な大空にブルーインパルスと銀箔の帯がとても良く映えていた。箔押し部分は触ると指紋がくっきり付くほどの光りようだったので、触らないように慎重に発送作業をしなければならなかった。同デザインのポスターも印刷され、北大の各所に掲示して歩いた。ブルーカフェのゲストである西浦さんが元・北大電子科学研究所(電子研)所長であったので、今回のポスターはぜひ電子研にも貼らせて欲しいと思い、電子研にもはるばる出向いて行って掲示してもらった。このようにして少しずつ準備は整い、後は本番を待つのみとなっていった。

(納品されたチラシとブルーインパルスの模型。銀の箔押しが輝いている。)

(チラシ発送作業中、ブルーカフェ担当の先生たちと)

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