実践+発信

「主体的な学びを引き出す『問い』デザイン」(7/22)安斎勇樹先生の講義レポート

2017.7.27

越後谷 駿(2017年度 本科/学生)

今回は安斎勇樹先生(東京大学大学院 情報学環 特任助教)の講義です。安斎先生は学びの場づくりについての研究と、課題解決のワークショップを実践的に行う、研究と実践の間を往復している方です。主体的な学びを引き出すにはどのように「問い」をデザインしていけばよいのか、お話を伺いました。

そもそもワークショップとは何か

これは大変難しい問題であり、今日、非常に多様な実践が行われています。講義ではまず二つの例からワークショップらしさについて考えてみました。一つ目は実写漫画をつくるワークショップです。参加者が架空の漫画をつくり観賞し、漫画について語り合います。そうすることで漫画のもつメディアの特性や面白さがわかります。二つ目は未来のカフェをLEGOブロックでつくるワークショップです。このワークショップでは、「場」とは何なのか、「場」の持っている力とは何なのかを考えることができます。

これらに共通していることは何でしょうか。まず一人ではなく複数の人が集まっています。また、普段とは少し異なる方法を通して、参加者は何かに気が付いたり、アイディアを生み出したりしています。そして、これらには設計図のようなものはなく、学んでいくプロセスも参加者自身が作り上げます。これらがワークショップらしさにつながっていきます。ここで、ワークショップの定義をするなら、「普段とは異なるものの見方から発想する、コラボレーションによる学びと創造の方法」とすることができます。

「問い」のデザインの重要性

ワークショップについてわかったところで、ワークショップをより良いものにするにはどうすればよいのでしょうか。一番重要なことは、プログラムをうまく組むことです。プログラムは様々な問いのつながりで構成されています。ワークショップの中で考えてほしい問いをいきなり聞いても、欲しい答えは返ってきません。そのため、問いをうまく組み立てることが重要になってきます。

先程紹介した未来のカフェをつくるワークショップを例に考えてみます。参加者に、矛盾を含んだ「危険だけど居心地のいいカフェとは?」と問いを与えたときと、矛盾のない「居心地のいいカフェとは?」と問いを与えたときで、ワークショップを別々に行い、参加者の様子を記録したところ、矛盾のある問いを与えられた参加者は、周りと話し合いながら創造的なものを作り上げることがわかりました。このように一つの問いでさえも参加者の学びを大きく左右します。そのため、問いの連続であるワークショップでは、いかに「問い」をデザインするかが重要なのです。

(講義では「良い問い」と「悪い問い」の特徴について考えるワークを行いました。)

効果的な問いを考える

効果的な問いとはどのように考えていけばよいのでしょうか。答えはありませんが、問いの切り口を探す方法を紹介します。そもそも問いとは、目の前にある問題をどのような角度から見るかで決まります。そのため、視座を動かさないと問いは立てられません。個人的な見方と社会的な見方を往復することを意識したり、過去と未来の二つの視座から見てみると良いでしょう。視座を動かすことで、問いが成長し生まれ変わったりするのです。

安斎先生、ありがとうございました。