実践+発信

「科学技術コミュニケーター学び方」(8/5)種村剛先生の講義レポート

2017.8.10

田中 穂乃佳(2017年度 選科/学生)

この夏、最後の講義を熱く語ってくださったのはCoSTEPスタッフであり、第10期修了生でもある種村剛先生。科学技術コミュニケーターは日々学びを積み重ね、進歩していくことが重要です。CoSTEPで働くずっと以前から、長く教育の現場に立ってきた種村先生はある時思い立って、CoSTEPの門を叩きました。現在ではCoSTEPの学びを活かして、科学技術コミュニケーションの教育研究活動にたずさわっています。この講義では、科学技術コミュニケーターの成長につながる「学び方」についてお話いただきました。

(サイエンス・カフェ札幌の事例やたくさんの書籍を紹介しながら講義を進める、種村剛先生)

なぜいま「学び」について考えるか

学びには二つの形があります。例えば、試験に合格することと、楽器の演奏が上手くなることの違いは何でしょうか。前者は、終わりのある手段としての学びであり、知識が重視されます。一方で後者は、成長するための学びであり、継続し、知識や経験を蓄積していくことが重視されます。科学技術コミュニケーションは知識だけで成り立つものではなく、後者のように成長しつづけることが求められます。そのためどのように学ぶのか、どのような態度がよいのか、なりたい自分に成長するための「学び」方について考える必要があります。

(CoSTEPでは科学技術コミュニケーション研究を広く知ってもらうため、学術誌「JJSC」を発行しています。種村先生は編集長なのだそうです。)

コミュニケーターが学びの構成を知る意味

では、成長としての学びを行うにはどうしたらよいでしょうか。学びの仕組みついて知ることが鍵となります。まず、「なぜこれを学ぶのですか」と自分に問いましょう。その答えは学ぶ目的であり、その目的に対して「それはどうして?」「どうしてそうなりたいのか」と問いを繰り返すことで、学ぶことの核心に繋がります。そして自身と同様に学んでいる人との共通点が見つかるはずです。

次に目的までの道のりに達成目標を意識しましょう。達成目標は、知識(わかるようになる)、技能(できるようになる)、態度(将来してみたいことにむけて行動する)で構成すると、目的に到達するための分かりやすい目印にできます。3つの要素がどのように変化したら、学んだことになるのかを自分自身で押さえることで、自分が今どこにいるのか、どれくらい達成できているかを俯瞰できるのです。

(講義がヒートアップしてくると、表情や身振り手振りがどんどん激しくなってきます。)

さらに、この学びの構成を知ることは「学ぶ」だけではなく「伝える」上でも重要になります。学びの目的を問うことで、その場に集まった人たちの共通点を知ることができます。3要素の観点から、その人たちがどのように変わったら目標を達成することになるのかを考えながら、「伝える」ことをデザインできれば、伝えたい人たちの成長につながる学びを促すことができます。科学技術コミュニケーターが学びの仕組みをとらえることは、「伝える」活動をするうえで、大事な指針となるのです。

この枠組みを意識し、デザインした講義の代表的な事例がCoSTEPスタッフが担当する、学部一年生向け全学教育科目「北海道大学の「今」を知る」です。この講義は種村先生の熱意と他の担当スタッフとのチームワークにより、平成28年度北海道大学エクセレント・ティーチャーズ(学生からの授業アンケートの結果を受けて選出)に選ばれました。

(エクセレント・ティーチャーズについて情熱的に語る種村先生)

1つから3つを学ぶ方法

それでは、実際に知識、技術、態度を学ぶとき、私たち科学技術コミュニケーターを目指す者はなにからどのように学ぶのがよいのでしょうか。例えば、CoSTEPの本科を専攻すると、1年間で講義、演習、実習を通して科学技術コミュニケーションについて学びます。講義、演習、実習は学びの3要素に対応しているため、それぞれが連携し合いながら学んでいくことができます。

しかし、それだけではありません、講義のみであっても、3つを得ることができると先生はおっしゃいます。例えば、講義では知識を学びますが、メモを取ることで自分が分かるようにストーリーを考えながら書くことで、ものごとを分かりやすく表現する技術を養えます。3要素は相互に関係しているため、一見すると、達成目標の1つしかできないようにみえるものであっても、意識してみると、知識、技術、態度の3つの学びを得ることができるのです。

そして、学びについて深く知り実践することは、「学び」の楽しさも感じられるようになります。夏の太陽のように、熱い熱い学び方を教えてくださったエクセレント・種村先生、ありがとうございました!


(CoSTEPの講義はこれで一区切り。これからそれぞれの科学技術コミュニケーション的夏休みがはじまります!)