内村 直之 先生(CoSTEP客員教授)と南波 直樹 先生(北大国際連携機構)を講師として、2月1日(土)午後と2日(日)の2日にわたってプレス/記者会見演習を実施しました。この演習は、CoSTEPと物質科学リーディングプログラム(ALP)の共同によるプログラムで、2015年度から実施して今年で5年目になります。
参加した受講者7名(CoSTEP6名・ALP1名/学生3名・社会人4名)は、それぞれ自分の研究や活動に関するプレスリリースを事前に執筆・提出したうえで当日集まりました。
(講義をする南波 先生と内村 先生)
プレスリリースの作成
まず、国際研究広報の専門家である南波先生が、プレスリリースとは何かについて講義をしました。また科学ジャーナリストの内村先生は記者の立場から適宜補足していきました。研究者とメディアでは、記事の「事前チェック」といったプロセスや、ニュースバリューといった情報の価値に対する考え方が異なっています。この点を理解しておかないと、すれ違いの元になってしまいます。
(異なる立場から議論する両先生)
講義と初稿へのコメントを踏まえて、受講生はプレスリリースを修正していきます。何が一番重要な結果なのか? どのようにしてその結果を得たのか? その科学的・社会的なインパクトはどこまで書けるか? 記者、そしてその先の読者を意識して、適切な情報の粒度で書くのはそれほど簡単ではありません。講義をはさみつつ、推敲は2日目午前中まで続きました。
(ピアレビューをする受講生)
模擬記者レク
2日午後は、模擬記者レクに向けての講義で始まりました。模擬記者レクは2016年度から始まったプログラムですが、今年度は簡略化してプレスリリース演習と同日の実施となりました。受講生全員は完成したそれぞれのプレスリリースに目を通し、そのうえで学生から1名、社会人から1名を模擬記者レク実施者に選びます。その観点は「自分が記者だったら取材に行きたいか」。
選ばれた2名の発表役は、1時間という短い時間で簡単な発表スライドと質問への対応を準備しました。一方の記者役は2件の発表それぞれに対して質問を考えます。記者レクはプレスリリースでは把握しづらかった研究内容の詳細や、研究者個人を知らせる/知る絶好の機会です。
しかし一方で研究者は記者の質問に対して良かれと思って、ついつい話してはいけない未発表の研究や、過大な社会的インパクトについて話してしまいがちです。一方の記者は研究者の言葉を捉えてニュースバリューを高めようとします。そこには協力関係と緊張関係が同時に存在しています。
(記者レクに関する板書)
持ち時間は発表約5分、質疑約25分。教室を変えて模擬記者レクが始まりました。記者役の受講生は必ず質問をしなければならないというルールです。すでにピアレビューや全体議論をしていたということもあり、短い準備時間でも次々と質問が記者たちから発せられました。
(例年より機材を少なくセッティングしましたが、十分に記者レクの雰囲気がでています)
(記者役に対して発表する鈴木 朝子さん)
(配布されたプレスリリースを読み、質問をする記者役の受講生)
(鈴木 大介さんの発表を聞く両先生)
(質問をしようとあらそって挙手をする記者たち)
(するどい質問をとばす南波 記者)
(研究不正の疑惑について追求されると、すかさず司会を務める広報役(ALP 大津 珠子 先生)が場をおさめました)
研究とメディアの今後の関係
北海道大学は2019年度これまでに研究関連のプレスリリースだけでも126本を公開しています。この数は年々増加しています。記者レクについてはこれまであまり多く実施されてきませんでしたが、今年度末から北大としてもより積極的に実施していく方針になりました。
今後さらに研究者にはマスメディアを介したコミュニケーション力が求められるでしょう。CoSTEPはこれまでのプレスリリース・記者会見演習のプログラムをさらに整理・発展させることを検討しています。
—過去の実施報告記事—
- 2015年度 ライティング特別演習(プレスリリース作成)
- 2016年度 プレスリリース作成演習・記者会見演習
- 2017年度 プレスリリース作成選択演習・記者会見選択演習
- 2018年度 プレスリリース作成演習・記者会見演習