チラシのデザインを担当したのは、本科グラフィックデザイン実習を専攻している小泉絢花さん。北海道大学電子科学研究所の職員として勤務しています。小泉さんの制作レポートを紹介します。
*
♪ おしくらまんじゅう、押されて泣くな ♪
がん細胞と健康な細胞が押し合い、がん細胞が押し出されてなくなってしまう!そんな驚きの現象を利用し、まったく新しいがん治療の開発に向けて精力的に研究しているのが今回のホスト、北大遺伝子病制御研究所教授の藤田恭之さんです。藤田さんの「がんを治したい!」という熱い思いを、おしくらまんじゅうの歌に掛けて、タイトルは「おしくらさいぼう、押されてなくなれ!」に決定しました。
最初は、研究内容をどう忠実に表現しようか悩みました。健康な細胞だけが入ったシャーレを青、健康な細胞とがん細胞が入ったシャーレを黄色、がん細胞だけが入ったシャーレを赤にして信号に見立て、藤田さんの研究室独自の実験系をそのまま描きました。しかし、自分のデザインを眺めて、「これを見てカフェに来たいと思う人はいない。チラシは研究内容を忠実に表現するよりも、お客さんに面白い内容だとアピールすることが重要なんだ」と気づきました。
ではどんなデザインならアカデミックな面白さをアピールできるのか、というのが次の課題でした。羊の群れが狼を押し出す絵、托卵された巣の雛たちがカッコウの雛を押し出す絵など、自然界でおしくらまんじゅうを連想しやすく、キャッチーな動物を使ったデザインを考えました。しかし、細胞の動きをおしくらまんじゅうで例え、それをさらに他の動物の動きに例えることに限界を感じました。結局、アニメのように顔のある細胞がおしくらまんじゅうする絵を描きました。
しかし…やはり納得いきません。健康な細胞ががん細胞を押し出す動画を見せていただいた時に感じた面白さを伝えるには何が足りないんだろうと悩み、絵ではなく立体で表現してみることにしました。粘土で作った細胞をガラスのシャーレに入れ、アクセントにパスツールピペットを配置しました。太陽光と蛍光灯、光の強さ、様々な背景で組み合わせを変えて、何枚も写真を撮りました。
タイトルなどのテキストを入れる部分は空白にしておく必要があるので、チラシの完成をイメージして何パターンも撮ったつもりでした。しかし、いざ写真とテキストを組み合わせてみると、一番良いと思えるテキストのパターンと写真の空白が合いません。「写真の加工」というテクニックを大津先生に教えてもらい、なんとか思い通りのデザインにすることができました。実は、現実にはありえない写真になっています。どこがおかしいか、お気づきになられるでしょうか?
白い健康な細胞たちが、灰色のがん細胞を右上に押し出す姿には、この研究の未来が右肩上がりでありますようにとの願いを込めました。藤田さんの研究室のみなさまが、この白い健康な細胞たちに「おしくら団」という素敵な名前を付けてくださいました。がんをやっつける、おしくら団のこれからの活躍に乞うご期待!
そして、藤田研のウェブサイトのタイトルイメージとしても使っていただけることになりました!藤田研のウェブサイト
最後になりましたが、一緒にデザインを考えてくれたり撮影に協力してくれたり最後まで付き合ってくれたデザイン実習の仲間たち、カフェ3班のメンバー、本当にありがとうございました。