実践+発信

選科A活動報告「殺す?」

2024.9.9

グループ名:架空生物管理委員会
メンバー:しほ、あやこ、ひでき、たっきー、みなと、むらやま

目的と達成目標

クマやシカの駆除がされた際に、苦情の電話が寄せられる事例がしばしばあります。生物の生死に対する姿勢や判断基準は人それぞれです。私達はその基準を揺さぶり、モヤモヤした感情や疑問を抱いてもらうことを試みました。そして、生物駆除に関する現実の事例を調べ、生命を左右する自分の判断基準を見直すきっかけとなることを目標としました。

【メンバーの役割】

全体統括:むらやま
出演:たっきー、むらやま、しほ、あやこ、モフモフ
タイムキーパー、進行管理:ひでき
映像制作:みなと
アンケート:しほ、ひでき
チラシ:あやこ
架空生物・設定考案:全員

内容

20XX年の北海道大学を舞台に架空生物の駆除について考えるニュース番組を作成し、3つの架空生物を取り上げました。架空生物にしたのは、生物の情報をシンプルにし予備知識なしで考えてもらうことが目的です。

Case 1.ミドリコノミムシ。糞で樹木を枯らし、生態系を乱す。駆除は実施済み。
Case 2.ヤミカレキ。花粉が光を吸収し植物相を乱す。駆除は行わず様子見。
Case 3.エゾモモニクショクウサギ。大型化が進み、北大生も噛まれた。通称「モフモフ」。

番組では生物の駆除について異なる意見を持つ出演者(保護派、駆除派)をスタジオに招き、様々な論点を提供しました。

Case3については管理方針が未定のため、殺処分すべきか視聴者に判断を求めました。1度目の判断は、多数決で「殺処分すべき」となりました。

その後、モフモフの個体「MOF18」がスタジオに登場。「愛らしい見た目」と絶滅危惧種である「希少性」の情報を追加し、再び判断を仰ぐと、視聴者の判断は「殺処分しない」に逆転、「MOF18」の飼育管理が決定して番組は終了しました。

番組終了後、「MOF18」による犠牲者が出てしまったニュース速報が流れ、ポスターの「殺す?」という文字とともにイベントは幕を閉じました。

  • 殺処分していたらどのような結末になっていたのか?
  • 判断は正しかったのか?
  • そもそも私たちがそれを決めていいのだろうか?

視聴者の皆さんにモヤモヤしていただけていたら幸いです。

結果

イベント終了後のアンケートでは29名に回答いただきました。

アンケートでは「イベント前後で判断基準が変化しなかった」とする回答が多かったです。一方で、「判断をどの程度迷ったか」については「迷った」と答えた視聴者は半分程度(48.3%)いました。また、イベント中には実際に判断が変化しています。よって、最終的な判断基準が変化せずとも、視聴者がイベントを通して判断基準を考え、モヤモヤしたことについては一定の効果があったと考えます。

MOF18を殺処分するか否かの判断

判断基準として重要視する要素は「人間の生活・社会への影響」(51.7%)が最大でした。「希少性」については13.8%に留まりました。

また、最も重要視しない要素は「見た目」(72.4%)でした。

人間への影響が最も重要視された理由は、ラストシーン(MOF18による犠牲者が出る)の衝撃が大きかったからだと考えられます。
一方、スタジオ登場後の追加情報である「見た目」と「希少性」は判断基準としては重要視されていないのに、実際の判断は①から②に至るまでに逆転しました。このアンケートはイベント終了後に回答されたため、①から②への判断基準の変化を十分に捕捉できていない可能性が考えられます。また、配信中のコメント欄では見た目の可愛らしさと希少性に言及した意見もあり、追加情報が視聴者の判断に影響した可能性は大いに考えられます。

学んだこと / 苦労したこと

サイエンスコミュニケーターとしてどのように問題を見つけ、他人に伝えていくべきなのか、自分たちの姿勢が問われる3日間でした。私たちのチームは、架空生物を用いて、モヤモヤをつくりだすという目的は早くに決まりました。しかし、目的を達成するためのストーリーおよび架空生物の設定の調整(どんな生き物なら殺すのをためらうか?という要素の盛込みの塩梅)に難航し、なかなかうまく進みませんでした。また、設定とともに問いたい問題もファンタジーだと捉えられないように、実在する事例を紹介して身近な問題だと捉えてもらえるようにしました。そして駆除派、保護派両者の意見をもとに視聴者が判断する際、葛藤を覚えてもらえるよう試行錯誤しました。
技術面では本番に動画と配信を切り替える際に不具合があり、準備の進行管理や事前練習の大切さを痛感しました。全体のスケジュールや各々の役割を明確にして、限られた時間の中で優先順位をつけて対策を講じるべきでした。
このように様々な苦労がありましたが、メンバー全員で意見を出しあい、納得のいくイベントが作り上げられたと思います。サイエンスコミュニケーターとして成長できた3日間となりました。

本記事は、2024年7月15日(月/祝)に実施した2024年 選科Aオンラインサイエンスイベント「LIFE」の報告記事の1つです。CoSTEPの選科Aコースでは、全国各地の選科A受講生が札幌に集まり、オンラインサイエンスイベントをいちから作り上げる3日間の集中演習を行っています。24人の受講生が4グループに分かれ、計4つのイベントが行われました。以下のリンクより、ご覧いただけます。他の活動報告もぜひご覧ください。

選科A活動報告「多事争論」
・選科A活動報告「殺す?」(本記事)
選科A活動報告「NO CHOICE NO LIFE」
選科A活動報告「“生きる”かたちの新提案」